なぜOnline MBAを選んだのか?
答えから言えば「働きながら学ぶのにOnlineが最適だと判断したから」である。
できることなら学校に行ってF2Fで学びたかったし、最初はそういうつもりであった。実は2年前に週末開講のExecutive MBA (EMBA)をいくつか選び出し、実際にAdmission Offerをもらうところまで行ったことがある。
しかし、日本にいる親が病気で倒れたこと、自分の仕事が日米間、米国内での頻繁な移動を伴うこと、キャリアアップのために会社を変えたことで、例え隔週の週末だけであったとしてもスケジュールをコントロールすることが極めて厳しくなってしまい、最終的に断念せざるを得なくなったという経験をした。
今回はそういう意味で再挑戦である。会社派遣などで仕事から離れることが許されていればまだしも、あくまで自己実現のためのMBA挑戦であり、そのために仕事を犠牲にするわけにもいかない。両立しなければ意味がないのだ。
もちろん、今でも学校に行って授業に出て、休み時間や食事の時に学友たちと話すことで親交を深めたり刺激を受けたりしたい。1960年代生まれのオジさんにとって、人間関係構築はF2F以外に想像できない部分がある。SNSをやらないわけではないが、友達作りの起点はやはりリアルな関係であり、SNSは補助でしかない。
ところが、21世紀に入ってからの世界ではこれまでの常識では考えられなかったようなことが頻繁に起こっている。
- 世界同時多発テロで一瞬にして数千名の命を失い、全ての飛行機がフライトを中止するという事態
- 地震、火山爆発、洪水などによる自然災害の頻発、それによる原発メルトダウン、サプライチェーン崩壊などの2次被害
- SARS, 新型コロナなどのウィルス拡散による経済機能停止、鎖国状態 etc....
こうなってくると、世の中はできるだけ人との接触を避けるように行動するだろうし、教育機関もそういう対応をせざるを得ないはず。現に日本の大学でもオンライン化対応の度合いで相当差が出ているように思えるし、今後はオンライン化が学校を選ぶ一つの指標になりうるのではないか。
教育を受ける対象によってオンライン化対応も異なってくるのではないか。
初期教育(高校まで)
人格形成や社会への適用などを身につけるための初期の教育(例えば高校くらいまで)はやはりF2Fが主流となるだろうし、そうでないといけないと思う。人間とのリアルな接点から学ぶことは大きく、避けて通るべきではない、と考える。
一方で、いじめ、差別、ネグレクトなど、リアルな接点で嫌な思いをしてドロップアウトした学生たちの受け皿として、オンライン教育が機能するはずである。私自身は「オンラインありき」には反対だが、「オンライン」というオプションを用意していくことには大きな意義があると思っている。
専門教育(大学、大学院)
大学教育以降はオンライン中心でもいいのではないか?
法律上でも18歳を過ぎれば大人の仲間入りをするわけだし(参政権など)、自分で教育を受ける手段を選択しても良いと思う。部・サークル活動など必要に応じてオンサイトでの活動をしてもいいし、授業はオンラインでもある程度のことは可能だと思う。
カリキュラムをオンライン中心に移行、自宅やリモート場所からのアクセスを可能にし、どうしてもリアル接点が必要な部分だけをキャンパスでの活動とすれば良い。学生たちのデジタルリタラシーは我々オジさんには想像できないくらい高いだろうし、寧ろNew Normalとして定着しやすいのではないか。
リカレント教育(社会人)
オンライン教育が最も可能性があるのが「社会人に対してのリカレント教育」だ。
自分もそうであるが、仕事を続けながら勉強するのは大変なことである。金銭的な部分もさることながら、時間の確保という部分が一番の問題だろう。
オンライン教育の場では、そもそも通学のための時間が要らない。Synchronous(リアルタイム)セッションでは決まった時間で拘束されるものの、それを補完するAsyncronousセッション(ビデオ、テキストベース)では空いている時間を使えば良いので、例えば仕事の移動中や昼食の時間を充当することもできる。ワークライフバランスの実現のための有効な手段だ。
オンライン化が進み、リカレント教育を受ける社会人が増えれば、一人当たりコストも下がり相対的に授業料も下がってくるだろう。授業の作り込みやプレゼンのやり方など、慣れてくれば質も上がってくるに違いない。
それでも、リアル接点の場がなくなることはない。例えば生物学、薬学、医学研究におけるリサーチなど、物理的な環境を必要とする学問、それ以外であっても時には人と人が触れ合う場がゼロというのはあまりに寂しすぎる。実際に、私が通うことになっているMBA@UNCでは、最低2回のオンサイト(Summitと呼ばれる3日間のセッションで、Chapel Hillもしくは海外主要都市で開催)参加が必須となっている。そういう場を通したリアルな人間同士の関わり合い、ネットワーキングは必要だと考える。
企業や教育機関も結果的にPandemicな状況が教育のオンライン化でのビジネスチャンスを体感することができたのではないか。
私自身はCOVID-19のようなPandemicが起こることまで想定はしていなかったが、結果的にOnline MBAを選択したことは正しかったと思う。仕事との両立を実現するという観点だけでなく、オンライン教育の可能性を実体験として感じることができるのだから。
このブログでもそういう実体験を誰かと共有できれば、という思いで続けていきたい。